新御三家って、それぞれ事務所とか別なのに、ものの見事にキャラクターが分かれてますよね。楽曲的にも早いうちから路線と言うかスタイルが確立してて、それも人気が長く続いた要因。後は、どうやって年齢とともに幅を広げていくか。
10年以上に渡ってトップアイドルで居続けた彼らのシングルヒット曲の中から、僕なりに好きな楽曲を10曲、選んでみました。
まずは
西城秀樹。
ワイルドな情熱派・熱唱系。アクションも派手で歌も上手いし声もハスキー。男から見てもカッコいい。
たくさんあるヒット曲の中で、現時点での僕の好きな順番はコレ。
1位.ブルースカイブルー
1978年リリース。西城秀樹でしか成立しない、スケールの大きな名曲。作詞はサスガの阿久悠。秀樹はこれでレコード大賞か、少なくとも最優秀歌唱賞を穫っておくべきだったと思う。でもそれほどの大ヒットに結びつかなかったのは、作りがシングル向けではなかったから。最後にならないと盛上がらないのね。いわゆるテレビサイズでは、なかなかこの曲の良さが伝わりにくい。ちゃんとフルコーラスじっくり聴くと、ラストの「青空よ心を伝えてよ 悲しみはあまりにも大きい」のリフレインが、ほんと胸をうつ。女性にとっても、こんな風に情熱的に愛されたいだろうし、男にとっても、例え他人の女であっても奪いたいと思うほど、素敵な女性に出会いたい。そしてそれほどの愛の喪失が、少年を「男」に変えるのです。
2位.炎
1978年リリース。熱唱系のヒデキのヒット曲には「傷だらけのローラ」や「ブーメランストリート」や「ギャランドゥ」などなど、有名曲は他にいっぱいあるけど、僕はこの曲が一番好き。それらの曲は、確かにヒデキじゃないと成立しないけど、シカケが大きすぎて、ちょっとシラフで聞けないみたいなところがあるじゃないですか。だけど、この「炎」はちゃんとリアリティーがあって、もの凄く感情移入が出来る。前半が低くて地味なぶん、サビの「あ、あ、あー」からの盛り上がりは爆発力満点。ヒデキと一体化できる瞬間ですよ。
3位.ブーツを脱いで朝食を
1978年リリース。この次期あたり、「脱・熱唱」を狙ってヒデキもいろいろとイメチェンを図ってたわけですが、いちばん成功したのがこのスタイル。つまり、セクシー系(と言っていいのか)。どっちかといえば地味なメロディーで、サビもあるのかないのか微妙だけど、歌はすごい色っぽくて、男でもドキドキ。女性はたまらないのでは。
で、ヒデキはこの地味目の曲を、意外にハデなアクションで歌うんですね。ライターのギミックが話題になったけど、それがなくてもなかなかのインパクト。
4位.眠れぬ夜
1980年リリース。やはり「脱・熱唱」を狙って、なんとオフコースの地味な曲をカバー。これはもちろん曲がとてもいいんだけど、小田和正とはまったく声質が違うのに、ヒデキバージョンもなかなかいい。原曲に忠実なアレンジも好感度が高いですね。純粋にヒデキの「声」が堪能できます。
5位.南十字星
1982年リリース。80年代に入り、若手アイドルの台頭で人気に翳りが見えた頃の、起死回生のヒット曲。時代的には‘今さら’感の強い純然たる歌謡曲だけど、純粋に‘ヒデキって、やっぱ歌うまいよね、いい声だよね’と思えるところが、ファンを呼び戻したと言うか、ヒットに繋がったのだと思う。
6位.悲しき友情
1980年リリース。ヒデキのディスコグラフィーの中では珍しい、筒美京平の作曲。とってもトリッキーなメロディー構成で、なんとサビがない。でも、ドラマティックな歌詞と見事にリンクして、一本の青春映画(昔の日活映画)を見終わったような充実感があります。
7位.抱きしめてジルバ
1984年リリース。言わずと知れたWham!のカバー曲で、なんと同時期に郷ひろみもこの曲をカバーリリース。この頃はすでに人気の低迷期に入ったヒデキに比べ、ヒロミはまだまだ定期的にヒットを飛ばしていたので、下馬評では圧倒的にヒデキが不利。赤っ恥をかくのではとさえ言われてたところを、まさかの逆転勝利。久しぶりの大きなヒットになりました。これはもう、プロデュースやディレクションの勝利ですよね。変に洋楽っぽさを出そうとせず、歌詞に英語も入れず、徹底的に歌謡AORにリフォームしたのが成功の要因。もう完全に‘ヒデキの歌’になってて、オリジナルよりもいいんじゃないかと思えるくらい。
8位.薔薇の鎖
1973年リリース。初期のヒデキの曲の中では、軽快ロックンロールなこの曲が好きかな。
9位.激しい恋
1974年リリース。定番曲だけど、この曲にヒデキの魅力が全部詰まってるというか、この曲でヒデキのスタイルが確立したと言えるので、入れておきましょう。あらためて聞くと、スピード感のあるアレンジがなかなか。この頃のスタジオミュージシャンの演奏力はべらぼうに高いです。
10位.ジャガー
1976年リリース。ヒデキ絶叫ソングの最高峰。後のシブがき隊に通じる‘おバカソング’に、ほぼ両足を突っ込んでるけど、歌が上手いと言うことは、それだけで説得力を生み出すという好例。
これだけのダイナミックな歌唱力があるのに、代表曲が「ヤングマン」だというのはヒデキにとって幸せなのかどうだったのか。確かに賞には恵まれなかった新御三家の中で唯一、それでビッグタイトル(歌謡大賞)を穫ったけど、それゆえに‘実力派シンガー’の称号をつかみ損ねたというか、もっともっと大きな曲を歌える人なのに、とは思います。