引き続き布施明のシングルレビューです。PART1は
こちら、PART2 は
こちら。
1980年というのは本当に「節目」となる年で、山口百恵から松田聖子に時代が変わったように、はっきりと世代交代が進みます。70年代を生きぬいてきた歌手にとっては、生き残りを賭けた闘いが始まったわけですね。
サウンドも、大きく変わります。アレンジャーも大変。
そんな観点から、80年代編のレビュースタート。
愛よその日まで
1980年リリース。
宇宙戦艦ヤマト劇場版2作目「ヤマトよ永遠に」主題歌。ちなみに1作目の主題歌はジュリーが歌う「ヤマトより愛をこめて」。
大ヒットして当然のプロジェクトで、ジュリーに続き布施明にオファーがきたのも納得。作詞は阿久悠で作曲は布施さん。編曲は宮川泰。
どうですか、この曲。いい曲だと思うんですけどね。壮大な映画の主題歌にふさわしいドラマティックな仕上がり。布施さんによる多重録音のコーラスアレンジも美しい。
でも、期待ほどのヒットにはならなかった。僕自身も、さほどテンションはあがらなかった。なぜか。
微妙に‘古い’んですね。詞とか、アレンジとか。80年代の空気には合わない感じがした。それはやっぱり「君は薔薇より美しい」を聞いてしまってたからかもしれない。
あるいは同時期のゴダイゴによる「銀河鉄道999」を聞いてしまってたからかもしれない。
ちなみにB面は岩崎宏美との競作。聴き比べると、さすがに甲乙つけがたいです。
I AM YOU
めでたくオリビア・ハッセーとゴールインした布施さんは、新作をアメリカで録音。そのアルバム「I AM」からのシングル・カット。作詞/オリビア・ハッセー、作曲/布施明という、言わばラブラブのバラード。
英語詞なのでもちろん売れないですが、なかなかのクオリティーです。テクニカルなヴォーカルもたっぷり堪能できますぜ。
前作「愛よその日まで」と比べると、アレンジや演奏から感じ取れる時代の空気の差がよくわかります。
でも僕はB面の
「DOMO DOMO DOMO」の方が断然好き。作詞作曲/布施明で、「そろそろ」の延長線上にある布施さんの私小説的な歌詞が微笑ましい。曲調はやっぱりディスコ。
見のがしておくれ
アメリカに行ってる間に、知らないうちにリリースされてたナンバー。たぶんテレビでも(もしかしたらライブでも)一度も歌われていないのでは。なぜか「Mouse & Akira」名義。Mouseって誰? 当時レコード屋で見つけてびっくりして買ってきた。
曲はと言えば、これがなんと前作B面「DOMO DOMO DOMO」の延長線上。すなわち、まさに「ザ・布施明」。サウンドは、ディスコというよりラテンかな。なかなか良いのです。前サビでキャッチーだし。B面は洋楽っぽいバラードで、ちょうど「I AM」をひっくり返した感じ。
勝手に想い出
さらに前作の延長線上、布施さんにしては珍しく、同じコンセプトのシングルが続きます。これは「ヒットスタジオ」で見たことがある。でも、どうせプロモーションするなら前作「見のがしておくれ」の方がカッコいい曲だけどなあ。
B面は、あっと驚く「日本バンザイ」。1976に刊行された布施さんのエッセイ「ひこうき雲」に収録されてた詞に曲がついたんですね。なんでいまごろこの曲が???
もしかしたら、日本にいないし、レコード会社も移籍するしで、契約を完了するための、ある意味やっつけのリリースだったのかも。
ザ・ヒーロー/それぞれの大陽
ごめんなさい、買わなかった・・・。
たまらなくテイスティー
そんなこんなで、フィリップス移籍第1弾。しかもCMソング。
ちゃんと80年代の音です。AOR路線ですね。1年早く出ていれば、もっとよかったかもしれない。作曲は、この頃「スローダンサー」のスマッシュヒットでちょっと注目されてたGANGY。
この頃の布施さんが、フュージョンやAOR路線に行くのは方向性としては正しかったと思うので、願わくば、やはり新進気鋭のアーティストとコラボをもっと聞きたかったかな、と。例えば玉置浩二やそれこそ山下達郎とか。あるいはベタだけど、寺尾聡&井上鑑チームと組むとか。後の角松敏生とのコラボの完成度の高さを考えれば、かなり面白い作品がリリースされてたのではと妄想。
ちなみにB面は、これまたザ・布施明な歌謡バラード「偽りの愛」。こういう曲がB面に入ってると安心できます。
僕がシングルを買ってたのはここまで。この頃から、続々登場した日本のロックアーティスト(ARBとかStreet Slidersとか小山卓治とか)を追いかけるのに大変で、小遣いがまわらなかった。
この後、布施さんのレコード(いや、CD)を買ったのは、前述の角松敏生とのコラボ「Estimado」。シングルの
「Around The World」は名曲。
なので、布施明レビューもいったんここまで。
お付き合いありがとうございました。