The Rolling Stonesと言えば、デビューが1963年。そう、あなたとわたしのほとんどが生まれる前に、もうプロとしてデビューしていたのだ。
リリースしたレコード・CDだって、とんでもない数になっているわけで、そう簡単に‘この1枚’が選べるわけもない。
ただ、今の音楽評論家は多感な青春時代にストーンズの全盛期と出会えたわけで、それゆえストーンズの最高傑作と呼ばれるアルバムは、どうしても60年代や70年代の作品に集中するわけですね。
もちろん「Sticky Fingers」も「Let It Bleed」も掛け値なしの名盤だけど、今の‘ケツメイシ’やら‘オレンジレンジ’やらの洗練された音を聴いて育ったティーンネイジャーには、そう簡単にあの‘ルーズな’サウンドの良さがわかるとは思えないわなあ。
だから、何かのきっかけでストーンズに興味を持って、くだんのアルバムを聴いてみてピンと来なかったからといって、自分のロックセンスに自信を消失したり、逆にベテランに過剰な反発心を持たないでほしい。何を隠そう僕だって、高校生の時に初めて「Dirty Work」を聴いた時は、どこがいいのかさっぱりわからなかったのだ。
せっかくストーンズは今も現役で、新作もコンスタントにリリースしてるわけだから、音のいいやつから聴いていこうじゃないか。
そんなわけで、僕のおすすめは1989年リリースの「Steel Wheels」。
じつはさっきの「Dirty Work」はその前1986年にリリースされたアルバムで、ミックとキースの中がいちばん険悪だったそうな。
その後、それぞれにソロ活動を展開しストーンズは開店休業。ちまたではふたりの不仲は決定的で、解散も時間の問題とまで言われてたとか。
だがしかし、そこはそれ百戦錬磨の不死鳥ストーンズ。いささかリフレッシュしたミックとキースがふたたびギターをもって顔を突き合わせ、お互いの負けん気がいい方向に向かって、信じられないくらい丁寧な曲作りで出来上がったのが、この「Steel Wheels」なわけですな。
特筆すべきは曲の完成度の高さで、それまではせいぜいAメロとBメロだけ(下手すりゃワンリフだけ)で曲を仕上げていたのに、このアルバムの収録曲にはほとんどにCメロがあるのだ!。
あと、ミックのボーカルもキースのギターも、前作から格段に上手く艶っぽくなっているのに注目。嘘だと思うなら、収録曲の「Almost Hear You Sigh」と「Slippin' Away」を聴くべし。レンタルしてでも、なんならネットで拾ってでも聴くべし。ほんと、いい曲でいい演奏だから。ここでオッケーなら、安心して1曲目からストーンズ印のロックンロールに身を委ねて下され。個人的には、3曲目の「Terrifying」が僕の好み。ワンコードのみのセッションスタイルでぐいぐい引っ張っていくのは、息の合うバンドのみに許される醍醐味だからね。
伝説の名盤「Let It Bleed」あたりを味わうのは、まだまだ後に取っておこうじゃないか。