・・・・そんなもん、わかってたらあんなに苦労しないよ~。
ま、でももうしばらく映像は撮らないので(正直しんどい。次は「夕陽色の涙」かな)、ここでセルフライナーノーツみたいな覚え書きをば。
僕は特に映像制作の勉強とかしたことないから、完全に独学、我流なのね。
唯一、随分昔に映画好きの友人が言った「映画は、‘絵’が繋がってないとあかん」という台詞(ちょっと実践もしてもらった)が拠り所。
初めて作った映像が
これで、普通のホームビデオとMacに付属してたフリーの編集ソフト(iMovie)を使って、1コマ単位で試行錯誤した時に、自分なりにわかったことがあって、それが正しいかどうかはともかく、ずっとそのやり方で編集をしてる。
市川崑のようなスピーディーなカット繋ぎと、コッポラのようなモンタージュが好きだから、まあずっとそればっかりですな。
あと、カメラワークにはこだわってる。家庭用カメラで、照明も無しで説得力のある「絵」を撮るには、カメラワークしかないからね。
昔、北野武の「あの夏、いちばん静かな海」を観た時に、ああ、これは「詩」だなあと思ったんだ。映像でこんな表現もできるんだって、ずっと心に残ってて。
余韻のある映像を作るには「詩」心が必要なんだって思った。
「詩」心は何かと聞かれれば、端的には「
言いたいことを言わない」ってことだと思うのよ。
「何でもないようなことが幸せだったと思う」とか「ミンナトモダチ」とか、そのまま口にした時点で、それは「詩」でも何でもなくなる。強いて言えば「頭の悪い詞」どまり。
だからPVを作るときも、絶対に歌詞をそのまま描いちゃいけない。
じゃあ、何を描くの?
「青い風と白い空」のPVを作った時に、「加速度」のPVも薦められたんだけど、その時はちょっと難しいなあと思ったのね。
なぜならその時パッと思い浮かんだ絵が、
「
誰かにボコボコに殴られて顔を腫らした男の子が、涙を流す女の子を後ろに乗せて、歯を食いしばりながら自転車を走らせる姿」だったから。
歌詞にはそんな人物設定は一切描かなかったけど、僕はとにかく「
俺は君を救い出したいんだ」って想いを歌いたかった。それを歌詞に書かなかった分、メロディーやアレンジにはそのエモーションをぶつけたつもり。
だから映像にしようとした時に、わかりやすい「そういう絵」が浮かんだと思うのね。
で、今の環境でそんな映像を撮るのはどう考えても不可能だから(それにそもそも、自分で自分を撮影できないし)、PVは考えてなかったんだけど、「青い風と白い空」効果か、協力して下さる方が現れて、メンバーも快く(過酷な)ロケに付き合ってくれることになって。
さて、どんな映像を撮ろうか。時間はかけれない。
最小限度の手間で、もっとも効果的な映像を撮るには?
でまあ結局、佐和子ちゃんひとりに「ストーリー部分」を頑張ってもらおうと。
彼女の「佇まい」だけで、なんとかそんな「ワケあり」な雰囲気を出してみようと。
「この子を救い出したいんだ!」って見えるようにしようと。
僕はシナリオも絵コンテもかかず、現場で考えて指示を出すので、いったいどんな「絵」を撮るつもりかさっぱりわからなかったろうにも関わらず、彼女はほんとに「いい表情」をしてくれて。思わずがっつりアップを撮った。
あと「自転車」というモチーフをどうするか。
回想でもなんでも、せめてワンカットでも「二人乗り」してる絵がないと、いくらなんでもわかりにくいだろうと思ったけど、その撮影のチャンスがなくなったので、またあれこれ考えて。
自転車をどこでどう使うか。
結果はごらんの通り。「意味はないのに面白い絵」になって満足。あと走行シーンはまあ常套手段だけど、撮影はちょっとスリリングだったのよ。
結果的には「とってもわかりにくいシュールな」映像になってしまったけど、アンバランスな緊張感は伝わってると思う。
でね。
「わかりやすさ」がなくなると、何が大変かといって、編集ですよ。
ストーリー性のない細切れの素材を、なんとか「意味ある」ものに見せなきゃいけないわけだから、例えて言うなら「完成図を知らないジグソーパズル」を前にした気分。
ね? 途中で投げ出したくなるでしょ?
そうそう、PV制作でもうひとつ大事だと思うのは、
「編集のリズムを、いかに音楽とずらせるか」
合わせるか、じゃないよ。ビートを合わせるのは小学生でもできる。
8小節目の頭だけ合わせて、後は微妙にタイミングをずらす、みたいなことが、結果クールに見えるっていうのが経験でわかったこと。
じゃあ、どこでどれくらいずらせるか?
そりゃもう、アナタのセンス次第。自分でもわからん。直感勝負。
オーバーラップやフェイドアウトも、使うととっても映画っぽくなるんだけど、使いすぎると突然ダサくなるしね。
今回、編集途中で「モノクロとカラーが随所で入れ替わる」ってアイディアが閃いて、こりゃいいやって思ったんだけど、これまた、どれくらいの頻度とタイミングがいいのか、あれこれ繰り返して感覚で判断しなきゃならない。
けっこう気付かない部分でも微妙に変化をさせてるんだけど、そういう見えない1コマ単位での拘りが、実は仕上がりの絵を豊かにするんだとは思う。
ま、そんなこんな僕なりに苦労をして、どうにかゴールに辿り着きました。自分を褒めてあげたい。そしてもっと褒めて下さい。
この数ヶ月で3本の映像を撮ったけど、続けて観てみると、なんとまあ。
3パターンの佐和子ちゃんが楽しめますね。キャラが全部違う。
これぞ、プロデュースの醍醐味。はは。
「
加速度」
「
JGA予告編」
「
青い風と白い空」