アル・パチーノが好きだ。
クリント・イーストウッドが「ついていきたいヒーロー」で、ポール・ニューマンが「なりたい自分」だとすると、アル・パチーノは「もっとも感情移入できる」役者かな。
若い頃の作品だと
「狼たちの午後」が一番のお気に入り(「ゴッドファーザー」は別格)。
切羽詰まって銀行強盗をやらかして、押し入ったとたんに取り囲まれて、人質と一緒に立てこもる羽目になった男の話。
シドニー・ルメットのドキュメンタリータッチの演出とともに、ぐいぐいと惹き付けられて、主人公に感情移入してしまう。
近年では何と言っても
「セント・オブ・ウーマン」。
もう何度も見てるけど(実は昨夜も見た)ほんとにこの作品での「盲目の退役軍人」の演技は凄い。神業。
マーティン・ブレストの演出も、空間と時間を少し広めにとってあるので、まるで一緒にその空間にいるような気分になれる。
絶望と孤独のどん底にいる老人と、トラブルに巻き込まれ挫折しようとしている若者。
自分では自分をどうにもできないけど、お互いがお互いの力になれる。
そんな人生の一瞬の出会いを、丁寧に暖かく描いてます。
「たとえ足が絡まっても、踊り続ければいい」の名台詞で有名なタンゴのシーン、
パチーノの感情が溢れ出すリアルなつかみ合いのシーン、
スリル満点のフェラーリのシーン、
そしてラストの大演説。
「困難にぶつかった時、逃げるのはたやすい。だが、一度汚れてしまった魂には、義足はつかないんだ」
人生の岐路にぶち当たった時にこそ、見るべき映画です。未見の人はぜひ。