小学校の頃、同級生にとても気の強い女の子がいて、その子が野口五郎のファンだって言ってたのを意外に思ったことがあります。
なかなか男には野口五郎の良さはわからないけど、女の子は「優しい人」が好きだからねえ。そういう意味では、新御三家の中で最も早くキャラが確立していて、実はデビューしてからすぐに安定した人気を獲得してたんですね。
「私鉄沿線」とかびっくりするくらいナヨナヨした歌詞だけど、あんまり不快感はないというか、説得力あるもんなあ。
70年代も後半になると、オトナの男として少しずつ路線変更をしなきゃならなくなって、不幸なことに「ザ・ベストテン」の始まった頃から人気が下降したため、三人の中では一番パッとしないイメージだけど、少なくとも70年代は一番セールスを上げてたんじゃないかな。
歌唱力にも定評があったのに、すぐ上の世代(いわゆるビッグ・フォー、沢田研二・布施明・五木ひろし・森進一)の全盛期とぶつかって、結局無冠に終わったのも、ちょっと不幸だったかも。
そんなわけで、現時点での僕の好きな10曲はコレ。
1.グッド・ラック
1978年リリース。最後のトップ10ヒット。ちょっとハードボイルドな歌詞と、AORテイストのオシャレなメロディーが、まさかここまでゴローと合うとは!と驚かされる名曲。もちろん作曲は名コンビの筒美京平。「サムライ」とか「戦士の休息」に通じる、いわゆる‘女を捨てていく歌’だけど、持ちキャラの‘優しさ’もちゃんと感じられて、女性も安心して聴けます(?)。
‘男は心に オーデコロンをつけちゃいけない 行かせてくれよ’
って、いいフレーズだねえ。
2.針葉樹
1976年リリース。よく「カックラキン大放送」で聴いたなあ。これも筒美京平。野口五郎でしか成立しない、優しくてスケールの大きな名曲。1位を穫りたかったねえ。結果的にはこの76〜77年あたりが全盛期で、曲の粒も揃ってて、もしこの頃から「ザ・ベストテン」が始まってたら、この後のゴローの人気ももっと違ってたんじゃないかと思ってます。
3.むさし野詩人
1977年リリース。ああ、甲乙つけがたい。ここまでの3曲は全部めっちゃ好き。比較的存在の地味なこの曲は、実は作詞が松本隆で、作曲はこちらも名コンビの実兄、佐藤寛。松本隆らしい情景描写の絶妙な詞も、ソフトファンクでカッコいいメロディー&アレンジも素晴らしい。ゴローの中では一番カバーしたい曲。
ちなみに昔、レトロなレコードプレイヤーのプラモデルがあって、それについてたシングルレコードのレーベルがこの曲でした。それくらい、当時の野口五郎は人気があったのです。
4.19:00の街
1983年リリース。僕らの世代で野口五郎のヒット曲と言えば、実はこの曲が一番印象深いんじゃないかな。完全にヒットチャートから忘れられて低迷していたゴローの、起死回生のヒット曲。これで紅白にも復活。作曲はもちろん筒美京平。
筒美京平って、とってもしかけの多いメロディーを書く人なんだけど、ゴローにだけはなぜか、一見地味な、でもとても音域の広い難しいメロディーを書くんですね。それでけ信頼しているということなのかな。この曲はよくカラオケで歌った。最後、半音上がるところが気持ちいいのです。
5.私鉄沿線
1975年リリース。説明不要ですね。さすがに僕も小さかったから、そんなにテレビで見た記憶はないけど、最後までソラで歌えるもんねえ。完全に男女の設定を逆転させた歌詞が、ある意味革命的。でも、実は男にはこういう女々しさも密かにあるので、歌うと意外に気持ちいいのです。
6.甘い生活
1974年リリース。野口五郎最大のヒット。日本ではほぼ売れた試しのない三連のバラードで、インパクト的にも「私鉄沿線」に劣りながら、これだけのヒットとなったのは、まさに筒美京平によるメロディーの素晴らしさの証明と言えるのでは。野口五郎の歌唱力も最大限に引き出してて、非常に質の高い楽曲です。
7.オレンジの雨
1973年リリース。ヒデキやヒロミもそうだけど、デビュー間もない頃はゴローも、キャラクターを確立するためにいろんなタイプの曲を歌ってて、この曲も、異色作ながらピタッと狙いがハマった曲。微妙にサイケでファンキーなアレンジが、この時代らしくて面白い。これ、カバーしても面白いかもね。
8.君が美しすぎて
同じく1973年リリース。ヒデキなら「傷だらけのローラ」に当たる、いわゆるシラフでは歌えないタイプの、インパクト抜群のナンバー。
9.青春の一冊
1979年リリース。80年代を目前にスタイルを見失い、一気にセールスを落とした地味な曲だけど、やっぱりゴローにしか歌えないタイプの誠実なナンバーで、なかなかに癒されますよ。
10.真夏の夜の夢
1979年リリース。コロッケの物まねで有名なナンバー。もうアレンジがね、時代の徒花と言うか、ちょっと今ではキツくて聴けないけど、ベストテンやヒットスタジオでは生バンドの演奏なので、非常にロックでカッコよく聞こえたのです。ゴローのギターもカッコよかった。
1977年の「沈黙」から「泣き上手」までのシングルも、非常に質の高い仕上がりなんだけど、あまりにも歌詞が凝りすぎてて、タイトルからでは曲が思い出せないんですよね。それでも安定してトップテン入りしてたんだからなあ。
もしかしたら、まだまだ野口五郎再評価の時代がこれから来るかもしれませんぜ。
ちなみに西城秀樹のレビューは
こちら。