随分昔、バンドをやり始めた頃、大阪のとある有名なライブハウスにデモテープを持って行ったことがある。
ネットなんてなかったし、バンド仲間も先輩とかもいなかったから、どんな風に交渉したらいいのかわからず、とりあえず電話をかけて出向き、おそるおそるデモテープを出して。
そしたら向こうの第一声が「客、何人呼べるの?」って。
嘘だろ。まず、音を聞けよ。演奏を聴けよ。
すごくヤな感じだったし、傷ついた。
もちろん全然未熟だったから、オーディション受けても落ちただろうけど、曲には自信があった。できれば育ててほしかった。
とにかく、将来どんなにビッグになっても、そのハコには絶対出てやらないと誓った。
あれから何年もたった今、ふと思い立ってそのハコにデモを持って行ってみた。
もちろん人は変わってるし向こうは僕のことを知らないだろうけど、なんつうか、基本姿勢は変わってないのね。あの時ほど感じが悪いことはなかったけど、でもそこはかとなく感じは悪かった。
今でも有名なハコだし、いいバンドは一杯出てるので、そこはそのやり方でいいんだろうと思う。やっぱり直感的に‘合う・合わない’っていうのはあるんだろうし、向こうには当然出演者を選ぶ権利があるわけで。
でも、名の通ったハコなんだから、もうちょっと懐の深い対応してもいいんじゃないの、とは思う。自分のステイタスを守るために人を平気で傷つけるって、どうよ。こっちはカッコつけずに、身ひとつで行ってんだからさ。受けて立ってみたって損することもないだろうに。
まあ、自分が傷ついたとしたら、そんな傷つくようなところに飛び込んだ方が悪い。
それが教訓。
人生には、反面教師が必要なのだ。
とにかく僕の気持ちは去年決心した通り。イチからやる。弾き語りでも前座でもなんでも。
おかげさまで、京都では思ったより早くバンドでやれるようになったけど、たとえ大阪でも、スタートはイチから。どんな条件でも飲む。
そういう意味では、まだまだどこかにちょっと思い上がりがあったかもしれない。
だから、昨日はまた思い立って、別の大阪のライブハウスにひとりで交渉に行って来た。名前に惑わされちゃいけない。過去の栄光も関係ない。今はホームページがあるから、集まってるメンツで、雰囲気や勢いが想像できる。だから、できるだけアツそうな場所を探して、はるか大阪ミナミまで。
そこに出演できるかどうかはわからないけど、会った担当の人は、非常にまっとうな姿勢の、志の高い、感じのいい人だった。もし出演が決まれば、まずはギターを抱えて、若い連中に混じって、ひとりででも勝負をしてみようと思う。
オレは今、調子がいいんだぜ。