昨日Pick Upというライブバーでfm GIGの公開収録があり、またまた凄腕のミュージシャンが集まったんだけど、演奏後の雑談で、またまた中島みゆき話で盛り上がりました。けっこうみんな好きなんじゃん。
そんなわけで、思い出したように「中島みゆき 独断ミニレビュー〜80年代編」です。「70年代編」は
こちら
「
生きていてもいいですか」
出ましたね。これですよ。あの有名な「
うらみ・ます」が入った1枚。みゆき流の‘70年代へのレクイエム’よろしく「暗さ」と「重さ」が満載。何せジャケットからして真っ黒だから。
とにかくこのアルバムは「
エレーン」に尽きるわけで、ドラマを匂わせながらも省略の多い歌詞に、淡々と始まるボーカル、それがやがてラストの1回の‘エレーン’という絶叫まで向かう流れが、まるで映画「砂の器」を見終わった後のような重い余韻を残す名曲。
昔は、エレーンがなんのことかわからず、何かの暗号か呪文みたいに聞こえて、それゆえの重みみたいなものを感じていたんだけど、後にそれが‘人名’であり、さらに実話を元にした歌だと知ってさらに衝撃。
ARBの「Just A 16」もそうだけど、実話を元にした物語を敢えて押さえた表現で歌にされると、余計に胸を撃たれますよね。そのためには大変な文章力というか、作詞の力量が必要なわけですが。
「うらみ・ます」に始まり、「エレーン」「異国」の暗黒コラボで終わる真っ暗さの中で、「
泣きたい夜に」と「
蕎麦屋」の優しさが余計に胸に沁みます。特に「蕎麦屋」は、ギターとフルートだけで‘夏の昼下がり’を見事に表現してて、いろんな情景が目に浮かぶ佳曲。
「
臨月」
買って来て初めて針を落としたときはびっくりしましたよ。「これが中島みゆきのアルバム?」って。それぐらい一気にサウンドが垢抜けした1枚。まさに80年代の幕が開いたわけです。この‘サウンドの転向’を成功させたことで、みゆきさんは80年代以降を生き延び、いやさトップに登りつめる成功を収めたんですね。
当時はその変わりっぷりにかなり戸惑いながら何度も聞いたけど、脱落しなかったのは、詞の本質に変わりがなかったから。あるいは、メロディーメーカーとしての魅力を再認識したから。みゆき節の残る「
あわせ鏡」が好きだけど、ウソみたいにメジャーコードを畳み掛けるB面も良いです。思春期に聞くのにまさにぴったりな感じ。僕の周りでもにわかに中島みゆきファンが増えた気がしたのもむべなるかな。
「
寒水魚」
年間1位の大ヒットアルバム。個人的には「悪女」って別にそれほど好きじゃないけど、これを好きだって言う人は、同級生や年上あるいは性別に関わらずほんとに多かった。
これも個人的なんだけどA面後半の感情過多な曲もあんまり好きじゃない。B面の「
B.G.M」や「
砂の船」のような、ちょっと押さえた感じの曲の方が好き。
「
予感」
シングル曲未収録ながら1位をちゃんと取ったところに、当時の人気のほどがわかるでしょう。ちなみにシングルも、この頃は出せば必ずトップ3に入ってました。このアルバムも、当時僕は高校生だったけど、みんな(特に女子は)とにかく1度は聞いてたと思う。
どんどんロックにハマっていった当時の僕を、もう一度グッと引き止めた大好きなアルバムであり、今聞いても名盤だと思う。
福山雅治を始めいまも歌い継がれる名曲「
ファイト!」はもちろんだけど、個人的には「
ばいばいどくおぶざべい」がベスト。めっちゃロックだと思う。スキマだらけのアレンジもカッコよい。
1曲目の「
この世に二人だけ」も、晴れた昼下がりの息苦しく乾いた情景が目に浮かんで好き。
あ、ジャケットも良いです。
「
はじめまして」
'84年リリース。つまりBOOWYやレベッカがブレイクを始めるバンドブームの初期の頃であり、洋楽全盛時代。それに呼応するかのようにロック色が強くなる、いわゆる‘ご乱心時代’の幕開けの一枚。フュージョン系の腕利きミュージシャンを集めて一発録りしたような曲もあって、今聞くとやっぱり古さは感じるけど、統一感はある。
いや、けっこう好きなアルバムです。
とにかく1曲目の「
僕は青い鳥」は、詞・メロディーともに素晴らしい完成度。このまま教科書に載せてもいいくらい。続く「
幸福論」もソリッドなロックでぐいぐい引き込まれます。
B面の「
シニカル・ムーン」からの流れも、ダークで凄みがあってかなり良い。そしてジャケットも良い。