昨日の日曜日は、久しぶりに夜、家にいてテレビを見ることができた。
つっても、見たのは「ラスト・サムライ」。
いや、泣けたですよ。
この手の映画になると、もはや時代考証やストーリー上のディテールはどうでもよくて、どれだけ人物を、いや、男を、生き様を描いてるかに尽きるわけですね。
渡辺謙も真田広之も素晴らしかったけど、最後の天皇とトム・クルーズのシーンがね、さすが男を描き続けるアメリカ映画。‘男が男になる瞬間’をしっかり押さえてます。
女子供にばかり媚を売るフ抜けた日本映画とはわけが違う。
渡辺謙の素晴らしいのは、変にもったいぶった重い演技にせず、キビキビと飄々と動いていたところ。それでいて、人の上に立つ人物の重みとカリスマ性を出せるのだから、アカデミー候補になるのもむべなるかな。
そのままテレビをつけてると、あまりにくだらない番組ばかりなので、DVDをとりだして「セント・オブ・ウーマン」を見ることに。もう10回くらい見てるんだけど、ね。
僕は、クリス・オドネル演じる青二才な高校生の気持ちも、アル・パチーノ扮する挫折して屈折した盲目の退役軍人の気持ちもわかる気がするから、何度見ても、最初の出会いのシーンから目が離せない。そこからすでに、ふたりの演技は演技を越えていて、似たような経験を持つ人にだけわかる抜群のリアリティーを醸し出しています。
とりわけ、アル・パチーノの演技は素晴らしい。演技賞狙いとも揶揄される派手な部分ばかりに目がいきがちだけど、盲目の演技とは別の、怖さと茶目っ気のリズムというかバランスがね、凄い魅力的なんだな。いるんだって、ああいう人。嫌いな人もいるかもしれないけど、僕は大好き。ああいう男になりたい。
最後の演説のシーンもね、内容なんて二の次、孤立無援の若者のところに、颯爽と現われて自分の側に、味方になってくれる、‘大丈夫だ’とばかりに、黙って腕をぽんぽんと叩いてくれる、まさにヒーローの姿。
死に損ないで嫌われ者のクズみたいな男でも、ヒーローになれる瞬間が、壊れそうな高潔な魂を救える瞬間がそこにあるわけです。
あ、もちろん演説の内容も素晴らしいんですよ。そのまま座右の銘にしてもいいくらい。
「この世には2種類の人間がいる。困難にぶつかったとき、戦う奴と逃げる奴だ」